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小規模多機能型居宅介護について

  • 10月5日
  • 読了時間: 5分

 先日は、羽咋市の小規模多機能型居宅介護部会の研修会に呼んでいただき、事例検討会への参加と30分ほどの話の時間をとっていただきました。実は私は2006年に小規模多機能型居宅介護が制度化された年に、石川県で初めて小規模多機能型居宅介護を開設した事業所の管理者と介護支援専門員をしていた経験があり、この制度の強み、魅力についてなどいろいろと思い入れがあります。

 小規模多機能型居宅介護の通い・訪問・宿泊は、介護保険制度の下でのデイサービス・訪問介護・ショートステイとは考え方・視点が異なるものであること。利用時間・内容などが先にあって、あるいは要介護度に応じた限度額の枠の中(例えば要介護1だから週三回のデイサービスでといったこと)で、より良いものをという考え方ではなく、その方の今の暮らしの在り方を継続していくために、(たとえば心と身体や環境などの)必要性に応じて必要なかかわりを提供していくという考え方であること。なじみのスタッフが通い・訪問・宿泊を通じて一体的にかかわっていくこと。24時間365日の暮らしを支えるという考え方であること。要となるのは、その方にとって今何が必要なのか、これからの暮らしになどんなかかわりが求められるのかをしっかりとアセスメントした上での柔軟なかかわりの提供であったり、一日の定員やスタッフの数が決まっている中での事業所としてのやりくりであったりということも含めたケアマネジメントであること。だからケアマネの質が小規模多機能の質を左右するといったこともお話させていただきました。

 またなじみのスタッフや環境の提供の重要さについては、例としてグループホームが、認知症をお持ちの方にとって力を発揮しやすいとされる理由を、認知症の中核症状と環境の持つ力などに触れながら、説明させていただきました。

 制度化されると、もともとなぜこのシステムが始まり、何を目指していたものなのかということを抜きに、とりあえず指定基準をクリアし、利益をいかに出していくかという事業所が参入してくる現実は、小規模多機能に限らず、グループホームでも起きていることです。利用回数にかかわらず登録してもらえば1か月の定額の収入が得られるシステムは何のためにということを抜きにして、利益だけを考える事業所がもしあるとすれば、サービスを絞って、人手を基準ぎりぎりにするなどして経費をいかに下げるかに重点を置きがちになるのかもしれません。

 けれどもそれでは、認知症をお持ちの方たちが住み慣れた自宅や地域で、これまでの自分の暮らしぶりを続けながら、安心して暮らし続けるための仕組みであるはずの小規模多機能が、事業所の都合に左右され(例えば土日は訪問できませんとか、18時以降は利用できませんとか)、これまでのデイ、訪問介護、ショートステイの枠組みで支えるのと大差ない状況で、ただ単に会員制の、いわば囲い込みの制度になってしまいかねない恐れがあります。

 それでこの制度が公的な制度として成り立つ前の、既存のデイサービスの制度などを利用しながらも、そこに自宅への訪問やお泊りなどを自主事業として展開していたこの制度の原型、前段階としての宅老所の歴史や理念の話も盛り込み、あらためて理念の大切さを伝えさせていただきました。

 30分の枠の中で盛り沢山の内容を詰め込もうとしたこともあって、話の起承転結がうまくいかず、話を聞いている最中のリアクションを見ていても、参加された方たちにとっては、はてな印もたくさん浮かぶような内容となってしまったようです。話した側としても十分に言いたいことを解きほぐして伝えることができた実感のないものとなってしまい、お招きいただいた羽咋市地域包括ケア推進室の方たちにはちょっと申し訳ない気持ちです。

 今こうして振り返っても、もっとこんな部分を膨らませてとか、ここを削ってとか、いろいろ思い浮かぶのですが、特に、登録したら24時間365日の暮らしを支えるシステムを利用できるための定額の支払いが生じることから、逆に利用日や利用時間を事業所の都合で制限することの是非について問いかける話も一つの視点として入れればよかったのかも…と思っています。

 そういえば、ちむぐくるに相談があった時に、金沢市の小規模多機能型居宅介護の各事業所の特色、強味などをあまり情報として持っておらず、これからそうした情報を集めていくことも一つの課題であることを改めて考えさせられました。

 ちなみに、今回の研修会の会場は「LAKUNAはくい」というところでした。羽咋市が交流拠点として作ったのだそうで、4階建ての建物の1階に図書コーナーがあって、高校生が集まっていたり、2階以上には室内公園のようなものがあって、親子連れがあそんでいたり、キッチンスペースやeスポーツのスペースや会議室など整えられていて、とても立派なものでした。今回の研修会の開催時間が18時半からだったので、羽咋駅近くに行けばわかるかなと思っていた私は、川沿いに照明が照らされていたり、明るい照明で照らされた建物に「へえ~」と車の中で一人声を出していました。機会があればぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょうか。

 

 

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